……ん?
ってか、吐息?
吐息を感じる距離って……だいぶ近くない?
思わず目を開けて確認したくなったのに、なぜか目を開ける事が出来ない。
まるでボンドで接着されてしまってるみたいに、開く気配がない。
いつも何気なく出来ている事が出来なくなると、普段はどうやって瞼を動かしていたのか分からなくなってしまった。
「本当に、寝てるんだな……?」
さっきよりも近い距離で星野くんの声が聞こえた。
瞼は相変わらず開けれない癖に、心臓だけはバクバクと騒音をかき鳴らしている。
「無防備に寝やがって」
まっ、待って……。起きてます! 起きてますから‼︎
目を開ける事が出来ないのなら、せめて体だけでも動かそうとしてみるけど、それも出来そうにない。
ウンともスンともいわないあたしの体。
「なぁ、本当に起きないんだったら……キス、するぞ? いいのか?」
ひー! なんでよ! そんなのダメに決まってるじゃん‼︎
何考えてんの⁉︎ いくら乗客が少ないといっても、いない訳じゃないでしょーが!
どうやらあたしの体は、口も動かないらしい。
異議申し立てをしたくても、それすら出来ない。
それをいい事に、星野くんとの距離はどんどん狭まってゆく。
吐息はもう、あたしの鼻先を掠めてる。
心臓の音はマックスまで高鳴り、皮膚や服を突き破って飛び出してしまいそうだ。
「……起きない浮田が悪いんだからな」



