「おーい、浮田 真依子〜。こんなところで寝るなよ」
星野くんはあたしに呼びかけてる。けど、本気で起こそうとしてないのはその口調と態度を見てれば分かる。
と言っても、あたしは既に瞼を閉じた後だ。
普段は重さなんて一切感じない瞼が、今はとても重い。
麩菓子が水でも含んだかのように、重い。けど、あたしはその重さに逆らおうともせず、受け入れた。
だから星野くんが実際に起こそうとしてるかどうかの態度は見れていないけど、でもきっとそうだ。
だって、本気で起こす気があるのなら、あたしの体に揺さぶりをかけてくるはずだ。
「起きろって。もうすぐ駅に着くぞ」
うん、分かってる。
でも、体が言う事きかないんだもん。
まるで自分のものじゃないみたいで、指一本動かせないんだよ。
「おーい、聞こえてるんだろ? いい加減起きろって」
オーケー、オーケー。もちろん起きるよ。
だけど、それは駅に着いてから。
駅に着いたら起きるから……ってか、むしろ駅ついてから起こしてよ。
そう思って、あたしはそのまま寝たフリを決め込んだ。
すると……。
「……本当に寝てんのか?」
あたしの顔を覗き込んでいる。
それは声のする距離感だとか、吐息の近さから感じた。



