「寒いと思ったら雪かぁ」
自販機がガラガラと音を立てながらあたしが選ぶジュースを吐き出してくれたと同時だった。
聞き覚えのあるこの声は、間違いなく星野くんだ。
ジュースを取り出し口から拾って背後を振り返ると、思った以上にあたしのそばへ来ていた星野くんがいた。
「なに買ったんだ?」
「コーンポタージュ」
「はぁ? ジュースじゃねーじゃん」
知んないよ、そんなの。
なに勝手に決めつけてくれちゃってんの。あたしはジュースを買うなんて一言も言ってないし。
そもそもそんな話すらしてないじゃん。
「ほっといてよ。そういう星野くんはなに買いに来たの?」
「俺? 俺はあれだ、コーラに決まってるだろ」
「いや、そんなの知んないし」
星野くんの定番ジュースなんて知るわけないし。
「ってかコーラとか寒くないの? 雪降ってるんだよ?」
「いつでもスッキリ爽やかを俺は目指してんだ」
「あっそ」
呆れた表情を向けてるというのに、星野くんは楽しそうに笑ってる。
今、あたしと星野くんの間にはこのコーンポタージュとコーラと同じくらい温度差があるって事に早く気づいてほしい。



