「篠田くん!」

「おー。お疲れさま。」

「うん。」

夕陽に染まる篠田くんに、思わず見惚れてしまうあたし。

「どした?」

「ううん。行こっ。」


今では当たり前の篠田くんの隣ーーーこの場所を、当たり前だと思わないようにしたい…。

特別な、あたしだけの場所だから。


「ねぇ瀬口さん、沙耶香結婚したって。大学は中退したらしいよ。」

「そうなの?おめでとうじゃん!」

篠田くんは、たまに森さんと連絡を取り合っているんだ。

森さん結婚したのか…良かった。


「ホント、良かった…。」

「…。」

篠田くんは、心底嬉しそうだった。

「てか瀬口さん、いつまで俺のこと”篠田くん”って呼ぶの(笑)?」

「篠田くんだってじゃん。」

「あ?そっか(笑)。」

爽やかな風が吹き抜けて、篠田くんのピアスが見え隠れする。