風の子坂を駆けぬけて


給食の時間の時だ。


水道で手を洗いに行った時、隣に明日香がやってきた。



「ちゆー!今日のメニュー、フルーツパンチだって、あれ、ポンチだっけ?」


「ポンチ、かな。」


「ま、いっかー、わたしね、給食でね、蒸しパンが好きなんだー。ちゆーは何が好き?」


「んーっと、カレーかな」


ハンカチで手を拭きながら、その場で立ち止まる。


「おー!いいね、わたしも好きー。カレーはこの前出たよね、今度いつかな」


「あ、ねぇ、あっちん。プロフィール帳って、今日持ってきた?」


「あー!!それ!あるある!来て来てー」



はっと目をまん丸くした明日香が、知優の腕を引っ張って教室へ連れて行く。




待たせてごめんねと、謝りつつ、お馴染みの太陽みたいな元気な笑顔を振りまくもんだから、怒る気もすっかりなくなる。


それが彼女の特権で誰からも愛される理由だと、知優もそろそろ自覚している。