風の子坂を駆けぬけて



一大ブームとなったプロフィール帳も、収束に向かってきた頃。


梅雨の走りかやたら雨の日が多く、今週3度目の朝からの雨。




知優の持つプロフィール帳は、手のひらでやけにそわそわと心もとない。

メガネをかけた猫のキャラクターが表紙で、淡い水色とピンクの色でデザインされた、文房具店で30分は迷ったお気に入りのプロフィール帳。



クラス全員分のリストが埋まったわけはなく。

かといって、それで虚しくて心もとない訳でもなく…。






足りないのだ。



明日香の分が。



あの日からもう1か月過ぎたはずだ。





忘れちゃった、明日持ってくるね、今日ないや、ほんとごめんね。

そんな感じでいつになっても知優の元に返ってくる様子がない。



先に声を掛けてくれたのは明日香なのだが、さすがの知優も痺れを切らし始めている。




今日こそは、と意気込んで明日香に声を掛けるタイミングを見計らっての、4時限目。