風の子坂を駆けぬけて

ふらつき、尻餅をつく。

「危ない!ちゆー!」

胡桃の声が聞こえた時、窮地に立たされた彼女の目の前をガードするかのように滑り込む健。


ボスッ

鈍い音とともに風が舞い上がり、ギュッと目を瞑る知優。


ゆっくり目を開けると、コロコロと転がるボールがあった。


「アウト―――!」

「わーーキャッチしたと思ったのにー」


取り損ねたボールはあっけなく健の腕から零れ落ちていた。


「はーい、ここで試合終了でーす!みんな、よく頑張りましたね、お疲れ様でした」


先生が呼びかけ、チャイムも鳴り、ドッチボール大会は終わった。


かっこよく終わりたかったせいもあり、健はくしゃくしゃっと髪をかきむしり、どすどすと足音を立てながらボールを片づけに向かった。


そんな彼の背中をうるむ視線で追う女の子が一人。


絶賛心が揺れ揺れの知優だ。



きっとあの時、健がいなければ自分が当たっていたに違いない。と、思わずにいられない。
どんなに助かったかどんなに嬉しかったか、言葉でちゃんと伝えたいのに、今は言えそうになかった。