紬ぎ、紡がれ、君に恋して。



ガラララ・・・。


静かに教室の後ろのドアを開ける。





どうやらお呼び出しの相手は男子生徒一名のようだ。







「あのー・・・・」


おそるおそるその人に近づく。







その怪しげな男子生徒が振り向く。


「おっ、来てくれたの?さんきゅーな」





どっと肩の力が抜けた。





「あ、秋月先輩だったんですか・・・」








「んん?そだよ?ってああ、ごめん。名前を書くのを忘れてたね。さぞ不気味だっただろーな。」


くくくっと先輩は笑う。

いやいや、カツアゲされると思ってビクビクしてた私の気持ちを考えろ。










無言でいる私に秋月先輩はまた口を開く。




「こほん。あ、そうそう話っていうのはね、率直に言うけど、鈴宮さんさ、サッカー部のマネージャーにならない?」




え・・・・。












数秒、いや数十秒経っただろうか。思考が脳に追いつき、私はようやく言葉を見つける。



「どうして私なんですか?」




「それはもう決まってるでしょ。前みたいな的確な観察力ができるマネージャーはそこそこいないよ。おまけに経験者ならまだしも未経験で、ましてやサッカー自体に触れるのは初めてなのにああゆう風な観察力がある人なら尚更。」



続けて先輩は言う。


「それに、うちのマネージャー、部室がいくら掃除しても汗臭いやら真冬のボールや道具洗いで爪が割れるとかの理由で先月、退部届を出したから現在この部にマネージャーがいないんだよねー。」



「別に一人とかじゃなくてもいいよ。例えばほら、前見学しに来た時に君を道連れにしたー・・・」


「夏希ですか?」


「そうそう、夏希ちゃん。あの子も誘って一緒に入ってくれればいーよ。」





「夏希が本望ですか?」

私は続けて先輩に問いかける。


「いやいや、違うよ。ぶっちゃけ夏希ちゃんには悪いけど君に一番期待してる。まあ、夏希ちゃんって子も手際よさそうだし、もちろん期待してるけどね。」






なるほど、ここに呼んだのはマネージャーの勧誘か。



・・・・それにしてもサッカー部のマネージャー・・・か。



私は制服のポケットに手を突っ込む。ひんやりとしたカツアゲ用に持ってきた小銭に指が触れる。






「考えておきます。」


そんなにすぐに結果出せるようなことじゃないしね。そう言い残して私は教室を出ようとした。







「あー、一応言っておくけど。」



「なんですか?」



先輩は私を引き留めた。





「俺は君の知っている通り、【桜丘の疾風】だよ。しかもこの部は全国大会の常連校で俺は次期キャプテン。そんな俺が君にスカウトした。だから俺が君に声をかけたからには断る理由はよっぽどの事情がない限りないと思うからね。」






・・・・。何とも言えなかった。






「・・・・結果が決まったら先輩の教室に行きます。」






そう言って私は教室を去った。