「見てろ」

アーラはそれだけ告げると、釣りに夢中になっている佐々原くんの方へ歩きだした。



アーラ……何をする気なの?



「おぉ、田村。やっと来たか。あんまり待たせんなよ」



佐々原くんは足音で気付いたのか、振り返るとそう言った。

目の前にいる田村くんが偽物とは微塵も疑ってないみたい。



「で?なんだよ話しって。これでも一応、謹慎中なんだけど?」

佐々原くんは川辺に向かって釣り竿を振った。



話し?

それはつまり……アーラが田村くんに化けて、ここに佐々原くんを呼び出したってことか。



一体なんのために?



「……田村はね、佐々原にいつもビビってるんだよ」

「ん?ビビってる?何で?」



次咲くんは一層声を潜めると、分からないと耳打ちしてきた。



よく分からないけど、佐々原くんが不良グループのリーダー格。

その横にいる田村くんの立場は、彼らの中では低いってことはなんとなく分かった。