「しっかし……どうしてあの娘はこうもまた……」


廊下でおしゃべりしてた数人の下級生が、怪訝そうに私の顔を見る。


私はそうなのだ、とても独り言とは言えない独り言をするくせがあるんだ。


しかも、腕を組んで大またでわっしわっしと歩く姿は、お世辞にも美しいとも好意的とも言えなかった。


まあいい。


それでも少し声のトーンを下げながら、私はまた自分の思考の中に降りていく。


(だからどうしてあんなヤンキーみたいなヤツ、好きになるかね……)


トモコは、失われた昭和と言われそうな田園風景がのどかに広がる場所に生まれ、これまでご両親や親類に囲まれて、大事に大事に育てられてきた。


それはトモコが気にしてる、ニキビの残った赤ら顔(私にはどこが跡だかわからないが)にもにじみ出てるし、優しい背中からも発散されてるし、ピアニストのような細い指も語っている。