どうしてかな。
いつもそうだ。
いつもは口が悪いくせに、こういう時だけ優しくなるの。
私の心に入ってくるの。
「…蓮巳くん」
そっと、身体中の妖力を集中させる。
ピリピリとした感覚があり、境内をくぐったときに自然と隠された自分の姿が現れる。
金狐の、尻尾に、耳。
瞳の色も、変わってしまった。
人の姿とはほぼ遠い、’’私’’の姿。
「………………」
「これが、私なの」
あっけに取られたような蓮巳くんを見据えて、はっきりと告げる。
「私、妖怪なの………蓮巳くん…」
1歩彼に近づく。
「…、」
と、それに合わせたように彼も1歩下がった。
……………あぁ、やっぱり。
怖がられてしまった。
嫌われてしまった。
「………いえなくて、ごめんなさい」
ぽつぽつと、涙が零れた。
わかってたのにね。
けど、蓮巳くんならって、きっとどこかで思ってた。
期待してた。
「こんな姿、蓮巳くんだって怖いでしょう?だから、嫌われたくなかったの」
「……………」
「………そばに、いたかったの」
…………ごめんね、本当は、もっと早く言うべきだったの。
蓮巳くんのためにも、……私のためにも。
そうだったら、ここまで好きが大きくなる前だったら。
こんなに苦しくなかったのにね。
「ごめんなさい……今までそばにいてくれて、ありがとう」
精一杯、笑った。
笑顔を作って、彼と離れよう。
彼の中の、私の最後の記憶は、笑顔でいたいから。
けれどやっぱり苦しくて。
俯いて、深呼吸する。
「…………ごめんね…」
私が呟いたとき、地面を蹴る音がした。
瞬間、ふわりと包まれる。
私は突然のことに、理解ができなくて。
目を瞬きながら視線を移せば、ふわふわの髪の毛、見慣れたマフラー。
「…………………は、すみくん…?」
嫌われたと思っていた蓮巳くんに抱きしめられているこの状況がわからなくて。
「……あ、の」
戸惑いとともに顔が熱くなる。
「誰が嫌うって?」
「…え?」
はぁ、と真横でため息が聞こえる。
「馬鹿だよねホント」
抱きしめながら馬鹿とはこれいかに。
「そんなことで嫌いになってたら5日もここに通ってない」
「……え?、え!?」
その言葉に驚いて、彼を押して目を合わせる。
「そんなことじゃないでしょ!?私人じゃないの!妖怪!!わかる!?ていうか5日って…」
彼は、まくし立てる私の口に指を当てて黙らせると。
「人だろーと妖怪だろーと珠紀は珠紀。わかる?珠紀と喧嘩してから言いすぎたと思ってずっと来てた」
私の疑問に答えてくれるのはありがたいけれど。
「……私、だから?」
「そう」
なんだって、私は私。
その言葉が嬉しくて、頬が熱を持つ。
「…ずっと、って…どのくらいいたの」
「5日間、学校終わってから日が落ちるまで」
………まじか。
「……そんなに長いこと待っててくれたの?」
そう聞くと、彼はマフラーで顔を隠して。
「……だから、そう言ってる」
と、少し拗ねたようだった。
いや、恥ずかしがってる?



