影遊び








きっと、幸せに。





彼の隣にいるのは、私じゃないから。










彼を見送ったあと、一人で庭に降りてみる。





………。




思い出すのは、蓮巳くん。





…会いたい。



私は、庭から外に続く勝手口に走った。









人の背中を押したのに、私が進まなくてどうするの。





受け入れてもらえなくてもいい。




怖がられてもいいから。






ちゃんと告げよう。




私のこと、ちゃんと話そう。





それからのことは、後から考えよう。






そりゃあ、しばらくは立ち直れないかもしれない。



でも。






このままさよならなんて、嫌だから。





走って走って、やっとのことで神社の境内につく。



息があがってとても苦しいけれど、足を止めたくなかった。





神社からでて、鳥居の元に向かう。




と、そこに人影があった。







「………え?」




それは、蓮巳くんだった。






いつも私が座って彼を待っているところに。




彼が座っていた。






私に気がついた彼は、マフラーで半分隠れた顔をこちらに向けた。




「…………やっときた」




彼の吐く息が白く染まる。



長く外にいたのか、遠目からでも彼の顔が赤くなっていることに気がついた。






「……蓮巳、くん……?」




もしかして。





ずっと、待っててくれたの?




「…珠紀」



彼はゆっくりと立ち上がると、こちらに1歩踏み出した。




「待って!」



私がそう叫ぶと、彼は不思議そうに立ち止まった。




「…なに?」





……今しかない。





「あのね……」




今なら、彼に逃げられても。




彼に触れる前なら、止められる。






「私……」




……言葉が、でてこない。




言うと決めたはずなのに、いざとなると詰まってしまう。




自分の意志の弱さにほとほと呆れる。






「……大丈夫だから」





そっと、優しい声が聞こえた。



その声にいつの間にか伏せていた顔を上げると、蓮巳くんが微笑んでいた。




「ゆっくりでいいから、聞かせて」



「…っ……」




ふと、涙がこぼれた。