歩いて15分、そう遠くもないこの高校に到着した。


「やっぱまだ誰もいねーじゃん。」


「俺は校長先生に挨拶してくるから、お前はさっさと教室行けよ。
じゃーな。」


はいはい。
ったく、俺何組なんだよ。

…………あぁ、クラス発表はあそこか。


えーと…1組ね。わかりやす。


…………あ、ねこ。子猫か?
道路真ん中でうずくまって…引かれたらどうすんだよ。


と、しばらく猫を見ていたら…


「危ないよ。」


一人の女が、猫を抱き抱えた。

遠目で見ると、地味な眼鏡女。
手入れがされているようには見えない伸びきった髪の毛に、長いスカートにきっちり一番上まで止まったボタン。

だけどよく見ると
綺麗な長い黒髪に、優しく猫に微笑んでいた。
その笑顔に
…………俺は、素直にかわいいと思った。

一目惚れとはこういうことを言うのか、その優しく微笑んだ笑顔に、俺の胸は完全に射ぬかれた。高鳴った。

俺はもう、この地味な女から目が離せなくなっていた。


その女はしばらくしてすぐそこの公園に猫を連れていったから、俺も追いかけて


「優しいんだね。」


話しかけてみた。


「…………どうして見てたのに助けなかったんですか?」


「え?」


こいつ、俺が見てたって気づいてたんだ。
…………にしても、さっきとは随分と表情が違うな。


「死んじゃうかもしれないのに、よく見てるだけでいられますね。」


すげー冷めた顔をして
…………いや、少し軽蔑した顔をした女は俺の横を通りすぎていった。