「……勉強、したいんでしょ?
土曜日、勉強道具も持って来なよ。」
「………大津くんが教えるの?」
「俺の実力舐めすぎ。
言っとくけど、俺がいたら塾なんて通う必要ないからね。
だから俺の彼女になんない?」
「なりません。」
「えー絶対役に立てるのにな~、俺。」
「それとこれとは話が別です。」
そんなことを言う桜子ちゃんだけど、表情が明らかにいつもと違う。
いつもはもっと、迷惑そうな顔をしていた。
それが今は…なんていうか、柔らかくなった。
俺をまともに見るようになった。少しだけ。
「はぁー、可愛い。」
桜子ちゃんの顔を覗きながらそんなことを言うと
「他人を喜ばせるための嘘をつく癖、直した方がいいですよ。」
と冷たくあしらわれた。
「あ、そうだ。
俺に涼介の連絡先教えてくれない?」
「……永井涼介ですか?」
「うん。
実はさっき友達になったんだよね~。」
「……本人から聞いてください。
勝手に教えることはできません。」
「じゃあ…天宮さんの…」
……あぁ!呼びにく!
涼介が名前で呼んでんだから俺も名前で呼びたい!!!
「イヤです。」
……また即答だし。
まぁ…不良が嫌いなんだもんな。
仕方ないか。
「……じゃあこれ俺の番号。
なにかあれば電話でもLINEでもしてきて。」
「必要ありません。」
「そんなのわかんないじゃん。
受け取るだけ受け取ってよ。」
「……わかりました。
じゃあこれはそのまま涼介に渡しておきます。」
……なんだそれ。
とりあえず登録はしてもらえんのかな…
よくわかんないけど…まぁいいや。