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桜子ちゃんが俺を避けて丘を降りていっても、俺はその場から動けなかった。


軽蔑する、か……


ただのボランティア、なんだけどな。
俺のこと好きと言ってくれたけど付き合えないから、キス。

だいたいの人はそれで喜んでくれてたし……
それで俺を責める人なんて、誰もいなかったのに。

適当にみんなと付き合うより全然ましだと思うのに。


俺が付き合うとしたら桜子ちゃんだけなのになぁ……


「あれ、桜子は?」


落ち込み、木に寄りかかってる俺に、珍しく普通の男から声がかかった。
俺に声をかけてくるやつなんてあんまいないのに。


「…………お前かよ。」


振り返ると、さっき桜子ちゃんと一緒に飯を食っていた永井涼介。

俺には苗字で呼べと言った桜子ちゃんのことを、名前で呼んで飯まで一緒に食ってやがるこいつが俺に話しかけてくるなんて

くっそ腹立つ。


「さっきまでここに桜子いたと思うんだけど。」


「だったら?」


「どこ行った?」


「……あいつになんか用あるわけ?」


「別にお前には関係ないと思うけど。」


……なんなんだ、こいつ。
喧嘩うってんのかよ。

………いや、でも待てよ…
こいつ、桜子ちゃんの幼馴染みって言ってたし…こいつなら桜子ちゃんのこと色々知ってんのかな。


「……まぁとりあえず座れよ。な。」


「は?」


「いいから座れって。
仲良くしようじゃないか。」


「…なんなんだよ、その態度の変えっぷり。」