「……ほんと、気持ちいいとこ。
人も少なくて穴場かも。」
「だろ?景色めっちゃきれいだろ。
桜子好きそうだなって思ってたんだよ。
昔から好きだろ。
こういう、現実逃避できるような場所。」
「うん、好き。
現実的ではない景色ね。」
「あそこで飯食お。」
涼介の指さす先には1つのテーブルとベンチ。
私たちはそこに向かい合うように座った。
「桜子さ、なんで友達つくんねーの?」
「なんでって……そんな暇ないから。
そんな暇あったら勉強してなきゃ。
私にもう失敗は許されないの。」
馴れ合いなんていらない。
休み時間でも勉強していなきゃなんだ、私は。
「……おばさん、変わったもんなぁ…」
うちの事情をなにもかも知ってる涼介は、遠くをみながらそんなことを言った。
「…………あ。」
そんな涼介は突然、なにかを見つけたように視線を一ヶ所に固めた。
「なに?」
だから私も涼介の目線を追うように、後ろを振り返った。
「……あいつさ、桜子追い回してるやつだよな?」
「あー、うん。」
私の後方150メートルくらいだろうか。
大津くんと早坂さんがキスしている。
こんなに遠くからでもわかるくらい、がっつりと。
「俺、あいつは桜子のこと好きなのかと思ってたんだけど。」
「え、まさか。やめてよ。
ただ遊ばれてるだけでしょ?こんな地味な女、あんまりいないもん。
ただ面白いだけ。」
「ふーん…
ま、あんな軽い男、どっちにしろ桜子のタイプじゃないか。」
「うん。」
「でも、一応いっとくけど
あんな半端なやつはやめとけよ。」
「なに心配してんの。
私があんなの、相手にするわけないでしょ。」
震えてる子猫を見殺しにするようなやつを本気で相手にするほど
私は愚かではない。


