「……変わらないもんだね。」
久しぶりに見たあいつは、いまだに大人しそうな男子高校生を脅していた。
「…どうしたの?」
歩き始めた、と思ったのに快斗はまたすぐに止まった。
「…俺、桜子ちゃんに釣り合う男になるんだった。」
そういってすぐそこにあるトイレのための曲がり角まで歩き、私の手を離した。
「ん。ここで待ってて。
動いちゃダメだからね?変な男が来たらすぐに女子トイレに逃げるように!」
それだけいって、快斗はまたゲームセンターのほうへと歩いていった。
それが気になって気になって…顔を少しだけ出して快斗を観察した。
……でも見にく。
ちょっとだけ…動いてもいいよね?
「かーのじょ。なにしてんの?」
……え?
「一人?俺らと遊ぶ?」
「…なに言ってるんですか、ゆっきーさん。」
「ほら、敬語。蓮がいたらまたデコピンだよ?」
「今はいないからいいんです。
っていうか何してるんですか?」
「何って遊びに。オチケンとね。
オチケンはまだトイレだけど。
桜子こそトイレの前でなにしてんの?」
「あ、そうだ。
ちょっと壁になってください。」
「は?」
背も高いしちょうどいいや。
「ちょ、どこに…って、快斗?」
「ゆっきーさんがそっちみたらバレちゃいますから、こっち見ながら私を隠してください。
私がそっちを見ます。」
「はぁ?なにそれ、浮気現場でも押さえるつもり?」
「中村龍一がいるんです。」
「え?」
…あと少し…あと少し近づこう…


