「ねぇ、桜子ちゃん。
今日の放課後って暇?」
「暇じゃありません。」
「じゃあ明日は?」
「暇じゃありません。」
「なら明後日。」
「暇じゃありません。」
「ならいつが暇なの!?」
「前にも言ったけど、あなたに付き合ってるほど私は暇じゃありません。
今日も明日も塾があるし、塾がお休みな日は家で勉強してるので。」
「…それで、楽しい?」
「将来のために今やるべきことをしてるだけです。
楽しいからと言って、未来を捨てることはできません。」
「だけど今は今しかできないことってあるじゃん。」
「それが勉強だと私は思っています。」
「それだけじゃない。
勉強だけが必要なら、学校なんて通う必要ないよ。
学校は、人間関係も学べる場所だよ。
勉強ばっかりしてたって、社交的にならなきゃなんの意味もない。
ずば抜けた才能があるなら別だけど、桜子ちゃんクラスの子なんて、たくさんいるんだよ。
人間関係を学ばなきゃ、将来のためになんかならない。」
大津快斗が珍しく真面目に、しかも的確に的を得た意見を言っていて、私はなんにも言い返すことができなかった。
「…………だからさ、たまには俺にも付き合ってよ。
社会勉強だよ。」
「イヤです。」
「…………まだだめか…」
「あなたに教わることなんか、なにもないです。」
…………違う。
こんななんにも考えていなそうな人に、自分の欠点をつつかれたことが悔しくて…
腹が立った。


