「━━ん、できた。
わかった?」


「う、うん…」


わかったから、早くその位置からどいてよ……


「……もー、なんでそんな可愛いかな。」


私の願いは虚しく、快斗はそのまま私を抱き締めた。


「顔真っ赤。」


「えっ…!」


「照れすぎ。」


「……ずるい。」


「え?」


「快斗ばっかり慣れててずるい。」


きっと、何人もの女の子にこういうことしてきたんだろうな。


「バカじゃん。慣れてねーし。」


「え?」


……そうなの?


「だって俺、本気で女のこと好きになったの初めてだもん。
自分からこういうことすんの、初めてだからね。」


「…そっか。」


初めて、か。
……よかった。


「だから、桜子ちゃんはなんにも考えずに俺の腕の中で幸せになっててよ。」


相変わらず快斗は私の耳元でそんなこと言うから、顔の紅潮はおさまらないし、心臓も高鳴ったままだけど

伝わってくる快斗の体温が心地よくて、こんな時間が続けばいいのに、なんて思っていたけど


現実はそんな甘くない。


「快斗ー!ご飯よー!」


下から聞こえる快斗のお母さんの声。


「……母さんかよ…邪魔すんなよな…」


「仕方ないよ。行こう?」


「……その前に。」


そういって快斗は私にキスをする。
甘くて、とろけてしまいそうなくらい優しいキスを。


「さ、さくら見てるよ…!」


「別にいいよ。」


いつもと違う真顔の快斗に、またドキッとする。
やっぱり余裕そうな快斗に私は振り回されてばっかりだ。