「本当は勉強なんて嫌い。
でもそれでお母さんが喜んでくれるなら、私は喜んで勉強をする。
奪ってしまったお兄ちゃんの未来の分まで生きるんだって。
………もう、私自身が私を殺すしか道はなかったの。」
私はもう私をやめるしかなかった。
それ以外のやり方がわからなかった。
「………じゃあ、なんで今日は今時の女の子になったの?」
「快斗が私のために変わってくれたから。
快斗いったじゃん。
俺も釣り合おうと頑張ってるんだからもっと頑張れって。
勉強も見た目も人付き合いもなんでも完璧にこなしてる快斗見て、私もそうなりたいって思ったの。
本当は勉強なんかしたくないけど、でも快斗たちに教わるようになってから楽しくなってきた。
塾では味わえない、学ぶことの愉しさを知った気がする。
だから今は勉強もいいかなーって思ってる。」
「………俺、桜子ちゃんにとってプラスになれてる?」
「え?もちろん。
むしろ、今までの人生の中で一番だと思う。」
「まじで!?やったね!!」
「うるさい。」
………でも、そうやって喜んでる顔を見るのも、嫌いじゃないよ。
「で、私はいつになったら部屋につれていってもらえるの?」
私たち、ずっとここで立ったままだよ。
「あぁ!ごめん!
こっちだよ。」
………ずっと、私の中だけで抑えてきた気持ちを口に出すことがこんなにも苦しいだなんて
私はやっと知ったよ。
自分の過ちを誰かに話すことを笑い話にできる日は私にはまだ来ない。
きっとそれが来ることができる人は、その過ちを許してもらうことができた人だと思うから。
…それでも、私は快斗と向き合うようになってからたくさんの感情を知ることができた気がする。
子供の頃には感じなかった思いを…
快斗が言う、人間らしくなったということはこういうことを言うのかな。
軽蔑される過去を誰かに言うのは怖いけど、きっと快斗なら私のすべてを受け入れてくれる気がした。
…あんなに信用できなかった快斗を、今では誰よりも信用している自分が一番怖い。


