「…桜子ちゃんは将来の夢とかないの?」


「子供の頃は涼介と結婚したかったかな。」


「それ言わなくていいし。」


「だって聞いたじゃない。」


「どんだけ真面目に答えてんの。
今の彼氏は俺なんだけど。
なら俺と結婚したいとかいってよ。」


「まだそこまで考えていません。」


「ったく、なんだよ。
ほんっと真面目なんだから。」


真面目なんだからって。
なにそんな可愛く言ってんの、この人は。


「………ね、ネクタイあげるからさ
桜子ちゃん、明日からリボンじゃなくてネクタイにしてきなよ。」


「え?でも女子はネクタイでは校則違反では?」


「ぜんっぜんそんなのことないよ!
っていうか秀名そんなに校則ないよ?生徒手帳読んだことある?

ただ女子にはネクタイ売ってくれないから、秀名女子のネクタイは彼氏持ちっていうサイン。
………って、他の学校の人も知ってる都市伝説的な話だけど…」


「へー、そうなんだ。」


全然知らなかった。そんなのあったんだ。


「秀名は制服もかわいいし、そういうのもあって女子には大人気なのに。」


「気にしたことなかったです。」


「ってことで、俺んちにあるのあげるから明日からそれ絞めてきてね。
明日からもその着崩しで来て。最高にかわいいから。」


「うん、わかった。」


………朝、着崩そうと思って着た制服は、あっさりと着ることができた。
何年も着崩してこなかった制服を着崩すことは簡単だった。
昔に戻ったみたいだった。

スカートの長さ、リボンの緩さ

そして、髪の毛を巻くこと


どれも私には全く違和感を感じなかった。

あの頃の私に戻った気がした。