「顔に出てんぞ」

「ほんと?」



鋭いな。

情けなくなって、ますますうつむいた。



「靖人、郁実ちゃんと上で遊んできたら」



大人たちの会話が盛り上がってくると、子供たちが退屈していると踏んだのか、おばさんがパスをくれた。

靖人が一度私を見てから、「じゃ、そうする」とうなずき、一堂に軽く挨拶をしてから、私を伴って2階に上がる。

健吾くんが私のほうを見ているのがわかったけれど、美菜さんの前でどんな顔をすればいいのかわからず、振り返れなかった。



「元気出せよ、あそこでお前と仲よくするわけにいかないだろ、健吾くんだって」



部屋に入るなりベッドにうずくまった私に、さすがの靖人も気遣うような声をかけてきた。



「そうなんだけど、それはいいんだけど」

「じゃあなんだよ、あの同僚って人と、なにかあんの?」

「やっぱりそう見えた?」



がばっと起き上がると、靖人がきょとんとする。



「やっぱりってなんだ?」

「…なんでもない」

「俺に嘘つく必要なくね?」



あるよ。

ほんとのことなんて言ったら、靖人が健吾くんを嫌うでっかい理由を提供してしまうことになる。

絶対言わない。

でもこのざわざわは、わかってほしい…。



「なに泣いてんだよ」

「靖人の心がもっと広ければよかったのに!」

「お前だけ1階に戻すぞ?」



ふんと強がってそっぽを向くと、窓が少し開いているのが見えた。

しとしと降る雨の音と、ほどよく冷えた空気が入ってくる。

高校生にもなった今、そうそう個室まで上がることもないので、ここに来るのもちょっと久し振りだ。



「私の部屋、よく見えるね」

「お互いさまだろ」