いやいや。

いくらなんでも、情だけで女子高生とつきあおうとは、すまい。


だけども。

あの時点で、情以外のなにが健吾くんのなかにあったというのだ。


とはいえ。

あれから半年たっているわけだし、その間に嫌になれば健吾くんはいくらでも、そういう態度をとれたわけだし。


なにより。

健吾くんは、かわいがってくれているじゃないか。

この私のことを、あんなにも。

そのくらい信じろよ、私。


お風呂に半分顔を沈めて、そんな問答を延々した。


すなわち。

気にする必要は、ない。


以上。



「あっ、しまった」



脱衣所に上がってから、着替えを忘れたことに気がついた。

しょうがないので取り込んだ洗濯物から下着だけ引っ張り出して履いて、首からバスタオルをかけて部屋に向かう。

ダイニングとリビングを突っ切って、階段のある玄関前の廊下へのドアを開けたところで、私は悲鳴をあげた。



「ぎゃー!」



靖人が、玄関で兄と話していたのだ。





「健吾くんにも見せたことないのに…」

「おかしな言い方すんな、どこも見てねえって言ってんだろ!」



ベッドに顔を伏せて、しくしくと嘘泣きする私を、靖人が怒る。



「じゃあなんでそんな顔赤いの!」

「お前がそういうこと言うからだよ!」



ふんだ。

見られたからには動揺させてやりたいという、この複雑な乙女心理がわからないのか。