学校から帰ろうとしたところ、そこそこの雨が降っていた。

昇降口で立ち尽くし、どうやって帰ろうか考える。

朝はかろうじて降っていなかったので、傘がない。

家に帰るだけだし、バス停まで走っちゃおうかなあと思っていると、固いもので背中をつつかれた。

靖人が傘を持って立っていた。



「恋の予感!」

「俺にそれを言うか」

「帰りが一緒になるの、新鮮だね」



開いてくれるビニール傘に入って、雨空の下に出る。

今日は一日教室が暗かった。



「夜、お兄ちゃんと花火しようって言ってたんだけどなあ」

「6時頃やむって予報だったぜ」

「えっ、ほんと」

「なんでお前ってそう、天気に対して丸腰なの?」



そうなんだよね…。

昔から、天気予報をチェックして傘を持ったりするのが苦手で、降られたらそのときはそのとき、みたいな感じで体当たりだ。



「うちの物干し場、雨が入り込みにくいから」

「物干しのせいなのか」

「危機意識が育たなかった」



どうでもいい話と判断したらしく、適当に流された。

夏休みが明け、9月もじきに終わる。

まだ残暑というにも早いような気候で、毎日暑くて夕立があって、でもそういえば、日が落ちるのが少し早くなった。



「健吾くんとは、ちゃんと続いてんの?」

「ちゃんとってどういう状況を言うの?」



バスが来たので傘を閉じた靖人が、わざと水を私のほうに撥ねさせた。



「冷たっ」

「減らず口叩きやがって」

「続いてるよ、おあいにくさま」



蒸れた車内は座席がほぼ埋まっている。

中ほどに並んで立つと、靖人がポケットからフルーツの飴を出して、ひとつを口に入れ、ひとつを私にくれた。