「ねぇ、大地。北海道ってすっごくすっご~く寒いってお母さんが言ってたよ?」


「うん」


「大地、寒いの嫌いでしょ?だったら、東京にいたいってもう一度お父さんとお母さんにお願いしてみたら?私も一緒にお願いしてあげるから。ね?」



そんなこと言ったって、無理だってことはわかってた。


それでも、どうにかして大地が北海道に行かなくて済む方法はないかと子供ながらに一生懸命考えてた。


大地のことを、どうしても引き留めたかったんだ……。



「俺だってお願いしたよ。毎日、言い続けてた。引っ越したくないって。美月と離れるなんて嫌だって」


「……っ」


「でもダメなんだよ。行きたくないけど、それでも、行かなきゃいけないんだ……」



大地の大きな目には涙が潤んでいた。


だけど、その表情から、大地はもう引っ越す覚悟を決めているんだと悟り、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。



「けど、美月。絶対に約束する。いつかまた、絶対に美月に会いにくるから!」


「……っ!」



そう言って、泣きながら笑った大地の太陽みたいな笑顔を見た瞬間、スマホから聞こえてきた機械音によって目を覚ました。