中へはいると、愛美が私に背を向けるようにして立っていた。


やっぱり、ここにいたんだね。



「部屋の前で騒いだりして、美月は他人の迷惑とか考えないわけ?」



ツンとした、愛美の態度。


だけど、その声が鼻声なのを私は聞き逃さなかった。



「こうでもしなきゃ、頑固な愛美がドアを開けてくれないでしょ?」


「はぁ?どっちがよ!美月に言われたくないからっ!」



勢いよくくるりと私のほうを向いた愛美は、目も、鼻の頭も真っ赤だった。


……ほら、やっぱり、泣いてた。



「ねぇ、教えてよ。今日、何も言わずに先にホテルに帰った本当の理由。私を困らせるため?それとも、」


「……気を引かせるためだって言ったら?」



真っ赤に充血した強い目で、私をとらえる愛美。



「気を引かせるためって、誰の?」


「美月のことも。みんなのこともに決まってんでしょ?」


「……え?」



私や、みんなの気を引かせるために、それで先に?