「……あ、そうだ。たこ焼き……」



美月を抱き締めながら思いだした俺。


すっかり忘れてたけど、男と一緒にあの場に置いてきたままだったんだった。



「たこ焼きのことは、一緒にみんなに謝ろ?」



美月が俺から体を放し、見上げながらそう言う。



「そうだな」


「……それより、私のせいで、大地の顔にツバかけられちゃうなんて……」



今度はうつむき、顔を歪める美月。



「美月のせいじゃないから自分を責めんなよ。まさか、アイツにツバとばされるなんて思ってもみなくてすっかり油断してた」



つーか、あの男、人様の顔にツバなんか吐いてくんなっての。


アイツの臭いツバが自分の顔からしてくるとか、マジ最悪。



「けど、美月こそ言い返してくれたじゃん?“大地になんてことすんのよ!”って。俺、すげー嬉しかったよ?あの瞬間、小学校の頃の美月を思い出した」


「……でも、今の私は、守ってもらってばかりで、大地を守れない」



美月は、悔しそうに下唇をかんだ。



「ばーか。俺だって、いつまでもあの頃のままじゃないっつの。自分のことは自分で守れるくらいに成長してるから。それに、言ったろ?これからは俺が美月を守るって」


「……っ、」


「けど、離れたとこにいたら守ってやれないから、俺から離れんなよ?」



美月は顔を赤く染めながら、コクンとゆっくり頷いた。