「あいみん、すげー!7秒46だって~!」
「さすが!現役、陸上部っ!」
“あいみん”と親しみを込めて愛美を呼ぶ男子たちが一斉におだてる声が遠くから聞こえてきた。
「もう、やめてってば~!全然たいしたことないのに恥ずかしい~」
よっぽど、そのしゃべり方の方が聞いてて恥ずかしくなるけど。
なんて、愛美のぶりっこ声にうんざりしていると。
「次、土屋」
いつの間にか、自分の番までまわってきていた。
「おっ!次はマドンナ様の出番じゃん!」
だから、そこのバカ男子。
その呼び方、ほんとにやめてってば。
聞いてるこっちが恥ずかしいから。
「頑張れ、美月ーーっ!!」
バカ男子の横で、今度は大地が叫んでいるし。
愛美だったら、ここは手を振ってニッコリこたえるところなんだろうけど。
もちろん、私がそんなことをするはずもなく。
私は大地と目を合わすことなくスルーする。
「マドンナ様、マジ、クールビューティーなんだけど!」
あのバカ男子、私のことバカにしてる?
──よーい、ピーッ!
イライラが募ってきていた矢先。
鳴り響いた笛の音。
私は、ただ前だけを見てスタートダッシュした。



