* * *




「……あー、くそ」




友達と一緒に足早に教室を出ていってしまった百井の机の前で、頭を抱える。


何してんだ、俺……。




祭りの日にあんな恥ずかしいことを言ってしまって、そのまま告白しなかったことを夏休み中ずっと後悔して。


夏休み明け、百井に気まずそうな顔されたら、もう今まで通り喋ってもらえなかったらどうしようって、バカみたいに不安になって。



いつも通りに接しようと必死に話しかけた、のに。



「……あいつ、何怒ってるんだ?」



やっぱり俺の気持ちが嫌だった?
気持ち悪くなった?


はぁ、とため息をついていると。





「唯」

「ああ、翔太」



「お前、百井に告白しなかったわけ?」


「うっせ……」




面白そうに笑う翔太を睨む。




「ちゃんと素直になれよ?」





うるせー。

分かってるよ、そんなこと。




怒った顔が可愛くて。
笑った顔をもっと見たくて。

いつもいつも、からかってしまう。


好きだって、ちゃんと伝えなきゃいけないことくらい。




「(分かっては、いるけど……)」