「倉科くーん」
倉科くんより少しだけ早く教室に入って、自分の席に荷物を置く。
久しぶりに持ってきた教科書を机の中に入れていると、すぐに倉科くんも教室に入ってきた。
荷物を置いた倉科くんの席に、可愛い女の子たちがわあっと近付く。
「これ、旅行のお土産!」
「私からもー!」
女の子たちから可愛いお菓子のお土産なんか貰って、嬉しそうにしちゃって。
……なんか、ムカつく。
その様子を見たくなくて、だけれどすごく気になってしまって、ちらりと視界の端にとらえていると。
「久しぶり、百井」
「お祭りの時以来だね、翔太くん」
隣の席で、倉科くんの友達の、翔太くんが声をかけてくれた。
お祭りに一緒に行ったメンバーのうちの1人だ。
爽やかな笑顔で挨拶されて、心がちょっとだけ癒される。
「あの後、唯とはどうなの?」
楽しそうにニヤリと笑う翔太くんの言葉に、胸のあたりのモヤモヤがまた復活する。
「どうって……何も」
私の心の中には大きな変化があったけど。
倉科くんは何も変わらないみたいです。



