残りの夏休み。


『──次会う時まで、俺のことばっかり考えてれば?』




彼のその意地悪な宣言の通り、私は彼のことばかり考えていた。

まんまと彼の作戦にはまったみたいで、ちょっとだけ悔しいけれど。




鍵につけた、ピンクゴールドうさぎのストラップが揺れるたびに、街灯に照らされた倉科くんの横顔を思い出して。


用事なんてないのに、メッセージのやりとりなんてしたこともないのに、メッセージアプリを開いては、倉科くんのアカウントを見て。


何もしてなくても、倉科くんのことを考えて。



……頭の中が全部、きみに支配されてるみたいだ。



窓を開けても暑い夏の空気が、あつくて、熱くて。
うるさいくらい鳴くセミの声が、脳内で何度も反響する。





「……会ったら、なんて言えば良いんだろう」