「浴衣着て来たんだ?」




そう後ろから声をかけてきたのは、なんだかいつも私に突っかかってくる唯くん。


……あ、この時はまだ「倉科くん」って呼んでたんだけど。


倉科くんとは席が近くて仲良くなったんだけど、いつもからかってくるし、後ろの席から髪とか引っ張ってくるし。


なんていうかこう、意地悪だ。

仲良くなれてはいる気がするけど、本当は嫌われてるのかなぁ、なんて少し不安になってしまったりしていた。



「う、うん……」





また何かからかわれるのかと思い身構えたのに。




「ふーん、似合うじゃん」




降ってきたのは、予想外に嬉しい言葉だった。



いつも意地悪な倉科くんの、ちょっと甘い言葉。



それだけで単純な私の胸は、きゅん、と音を立てて、甘く痺れるみたいに締め付けられる。