「──じゃあ逃げんな」 走り出せば、怪訝な顔をして追いかけて来る。 唯くんの足の速さに私が勝てるわけなくて、全力で階段を駆け上がったのに、屋上の前で逃げ場をなくした。 屋上は今は鍵が閉まっていて、唯一の逃げ道の階段には唯くん。 追い詰められた私は、その場に座り込んだ。 「なに怒ってんの?」 私の目の前にしゃがんで、目を合わせてくれる。 やけに優しいその表情に、涙で視界がぼやけた。