「唯くん、可愛い〜」
ふふっと笑ったら、可愛いはずだった唯くんが、ムッとしたように私を睨んで。
クイっ、と勢いよく引っ張られたネクタイ。
え、と声を漏らす私はネクタイを引っ張られるまま、唯くんの方へ引き寄せられる。
グッと近くなった顔。
至近距離で見る唯くんの綺麗な顔に、吸い込まれそうな茶色い瞳に。
近づいたからわかる、柑橘系の柔軟剤の匂いに。
どっくん、と心臓が大きく跳ねて、みるみるうちに頬に熱が集まる。
「お前ムカつく……調子乗んな」
私の左の耳もとで囁かれる、わざととしか思えないくらい色っぽい声。
小さく吐息がかかって、きゅっと目をつぶった。ぎゅうっと疼いた胸に「っ、」と息を漏らす。
左耳に身体中の熱が集中するみたいに熱くて、心臓がドキドキ煩い。



