「……柑奈」



交差点の手前。

ここまででいいよと言われたのでバイバイしようとしたら、唯くんが立ち止まって私をじっと見つめた。

暗闇に目が慣れてきて、唯くんの真剣な表情がよく見える。




「これからなにが起こるかわからないし、ふたりともずっと近くにいられるかわからないけど、」



唯くんの落ち着いた声が、暗闇に溶ける。
私の胸の奥に落ちる。




「──柑奈のこと、絶対離さないよ」




「っ、」



「だから一生、俺の隣で笑ってろ」




プロポーズみたいな言葉。
唯くんらしい、ぶっきらぼうだけど、愛に溢れた言葉。


止まったはずの涙がまた溢れてきて、さっきよりも泣いてしまった。


だけどこれは悲しい涙じゃないよ。