お父さんが海外転勤になるかもしれないこと。私も海外に住むのかもしれないこと。 それを伝えたら唯くんは、しばらく言葉を失ってから、「そっか」とだけ呟いた。 「……柑奈はどうしたい?」 ぽん、と私の頭を優しく撫でる、唯くんの大きな手のひら。 いつもより丁寧で、あったかい声。 「行きたくない、ここにいたい……」 みんなと、唯くんと、離れたくないよ……。 泣いている私の隣に黙って寄り添って、背中をさすってくれる唯くんが、やけに大人っぽく見えた。