2人は私が帰ってきたことに気付いていない。 きゅ、と唇を噛む。 嫌だ、私は行きたくない。 だけど高校生で一人暮らしなんて、許してもらえるわけない。 ……だけど海外転勤になったら、学校は?家は? なにより、唯くんは? 唯くんに会えなくなっちゃう……? 「そんなの嫌……」 消え入りそうな声で呟いた私は、くるりと体の向きを変える。 リビングに入るのをやめて、もう一度靴を履いて、家を出た。 どこに行くのかも決めていないけれど、家から逃げるように走る。