焦って私を呼び止める唯くんを振り返ることができずに、屋上のドアを閉めて、階段を駆け下りる。


下の階に降りるにつれて、楽しそうな、賑やかなみんなの声が聞こえてくる。




「っ、私、何しようとした……?」




1階まで一気に階段を駆け下りて、人気|《ひとけ》のない廊下で呼吸を整える。



唯くんの唇が、りんご飴の色に染まっていて。

隣にいる唯くんが、どうしようもなく愛おしくて。

なんだかすごく、幸せな気持ちになって。





……それでもっと、触れたいと思った。




どうしよう、引かれちゃったかな。

私がキスしたいって思ったの、気づいたかな。


……唯くん、びっくりしてた。



「ああもう、最悪……」



なんて恥ずかしいことをしてしまったんだろう。



……唯くんは私とキスしたいって、思ってないのかもしれない。