「柑奈、そこすげーはみ出てるよ」



夏休み真っ只中の、8月のある日。


私たちは教室に集まって、文化祭の準備を進めていた。


教室にはクーラーが付いているからいいけれど、外は意味がわからないくらい暑い。


まして私たちは制服を来ているわけで、スカートの中に入れたワイシャツも、胸元のリボンも、暑さを助長する。




床に座って「お茶処」と書かれた看板を塗っていた私の隣にしゃがみこんだ唯くんは、制服のズボンの裾をまくって、学校の前でよく配られている予備校の宣伝の団扇をパタパタと扇いでいる。




「え、どこ?」



唯くんに指摘された場所を見ると、たしかに背景の絵の具が文字の部分まではみ出していた。



「ほ、本当だ……」

「はは、不器用」



言葉とは裏腹に優しい顔で笑う唯くんは、もう一本の筆を持って一緒に直してくれた。