「遅くなっちゃったね」

「お前が1問1問つまづくから」

「ご、ごめんなさい……」

「はは、いーけど」




唯くんとそんな会話をしながら歩く、いつもと変わらない夕方の道。

私の数学の課題が終わらなくて、唯くんをこんな時間まで付き合わせてしまった。


文句を言いつつも、なんだかんだ最後まで付き合ってくれる唯くんが、優しい。


ふたりで歩くいつもの道は、もうすぐ夏休みなだけあって、夕方でも蒸し暑い風が吹いている。

夏が終われば、唯くんと付き合い始めて1年だ。


半袖になった唯くんのワイシャツ。

暑いからって、少し緩めたネクタイ。

少し前を歩く唯くんは、「あっつ……」なんて言いながらワイシャツをパタパタさせている。


その仕草がなんだか色っぽくて、照れくさくなって目を逸らした。

……でも、やっぱり。

もう一度だけそんな唯くんを見たくて、目線を戻してしまう。