「……あのさ」 しばらくの沈黙を終わらせたのは、倉科くんだった。 静かに話を始めた彼に、私も顔をあげる。 「うん……」 静かな教室。 遠くに聞こえる、運動部の掛け声と吹奏楽部の楽器の音。 カチ、カチ、と機械的に一定のリズムを刻む、時計の秒針。 それから、頭の中でどくん、どくんと脈打つ心臓がうるさい。 「迷惑、だったらごめんな。祭りの日のこと……嫌だったら忘れていいから」 少し掠れた倉科くんの声。 俯いて隠れた、少し赤い頬。 「でも、忘れる前に、1回だけちゃんと言わせて」 「……え、」