それに対してアズマは「ふーん…」と軽くうなづいた。


「じゃあ礼するよ。拓夢に」


そう言うとアズマは俺に向かって歩いてくる。


何をするのかと固まっていると、アズマが俺の目の前まで迫ってきた。


そして俺の肩に手を乗せながら耳元で、


「ありがとな、拓夢…」


と、囁いた。


全身が一瞬震え、顔がみるみる赤く染まる。


その光景をみていた健太とさおりの息を飲む音が聞こえた。


「じゃあな!」


アズマはそう言って体を離すと、向きを変えて行ってしまった。


3人はそのまま動けずに、ただアズマの背中を見送っていた。



3限の始まりを告げるチャイムが鳴り響いていた。