「あ、ジュジュ!」

 カルマンが真っ先に駆けつけるが、その側にいる長身の男の存在に気がついて立ち止まってしまった。

「ジュジュ、何してるんだ。早く逃げて」

「えっ? カルマンどうしたの?」

「そ、そいつは、魔王だ」

「魔王? えっ?」

 ジュジュがキョトンとして、セイボルを見れば、セイボルは別人のようにカルマンを睨んでいた。

 だがその怖い表情になればなる程、ジュジュの記憶が呼び起こされた。

 一定の距離をあけ、カルマンとセイボルがにらみ合っている。

 そこにマスカートとムッカも加わり、状況を把握すると、力強くセイボルを睨み返した。

 その彼らの頭上でモンモンシューが飛んでいた。

「オーガが現れておかしいと思ったら、やはりセイボルが絡んでいたのか。道理であのオーガは様子が変だった訳だ。私達の注意をそらす目的だったのか」

 マスカートが怒りを露にした。

「くそっ、卑怯だぞ、セイボル。ジュジュを返せ」

 ムッカも食ってかかる。

「ちょっ、ちょっと、一体どうなってるの? この人は悪い人じゃないわ。この人は……」

 ジュジュは城の関係者だと言いたかったが、それを言ってしまうと自分の正体がばれるために言えない。

「ジュジュ、早くこっちに来るんだ。そいつはこの森をオーガと組んで支配する魔王だ。かなりの悪者だ。そんな奴と一緒に居たら危ない」

 マスカートが必死になって呼びかけるも、ジュジュは完全に訳がわからない。

「あの、皆落ち着いて」

「ジュジュ、あの者たちの言い分は信じるな。あれは勝手な思い込みだ」

 セイボルが応酬する。

「セイボル、なぜ嘘をつく。一体ジュジュをどうするつもりだ」

 マスカートは責任者ながら、一番先頭に立ち、そしてじりじりと近づく。

 その手にはすでに剣を構え、セイボルに向けていた。

「仕方がない。ここは一旦引き上げるしかないようだ。ジュジュ、また後で」

 踵を返し、セイボルは森の奥深くへと走り去っていく。