私は、課長に許可の印鑑をもらおうと、彼の机の前でスタンバイしていた。
ところが、先に課長に意見を聞きに来ていた前の二人が、藤原課長と私を無視して激しく言い争っていた。
「わからん女だな、あんたは」
月島さん、あなただけです。
吉沢桜子先生にそんな口が利けるのは。
「わからない?いったい、私のどこが分からないの?」
ほら、怖い。
私なら、足がすくんじゃう。
課長のところに月島さんと桜子さんが議論していた。
「蛇とマングースだな」
と二人に聞こえないようにつぶやくのは藤原課長だ。
決して私じゃない。
二人は、藤原課長を挟んで、さっきからやり取りしている。
私が聞いてる限り、どっちもどっち。
さらに堂々巡りだ。
「裕二どう思う?」
「営業の研修については、月島さんの方が熟知してるよ」
ああ。はっきり言うなこの人も。
「裕二は、この人の肩を持つっていうの?」
鼻息が荒い桜子さん。
「肩は持ってないだろう?意見を聞かれたから答えただけだ」
あっさり答える藤原課長。
「もう、二人して結託して」
「結託なんかするか、旗色が悪くなるとヒステリックになるのは、あんたの方だ」
子供から、大人まで変わんない対応をするのは、月島さんだけのような気がする。
「仲がいいんですね」
どうでもいいから、早く印鑑をもらおう。
「これのどこが仲良く見えるんだ」
月島さんが絡んで来た。
「あら、私月島さんの事好きよ」
「なに言ってんだ、あんた」
ん?
私は、藤原課長と顔を見合わせた。
どういうこと?
「単純だし、まっすぐだし。分かりやすいし」
桜子さんが得意げに言う。
「褒めてないだろう」課長があきれて言う。
月島さんが営業部の課長になって、本社に来てから桜子さんとこんなふうにやり取りしてる。
いつもこんな感じだ。
「悪いけど、これから会議だから、席外すよ」
藤原課長が立ち上がった。


