私はオフィスで、一向に上手くならない、パソコンの操作に手を焼いていた。
課長のおかげで、体の節々が痛くて、おまけに言うことを聞いてくれない。
『結局は、苦しみながらでも、何とかなってしまえばそれでいいのだ。
上手く、システムに乗っていければ何事も心配することなんてない。
上手く行ってるときは、誰だって悩まない』
昨日の、彼の言葉を思い出す。
あの時の、切羽詰まった時の言葉だとは思えないけど。
課長らしい。
「そうなんだよねえ」
と口に出してしまってから、一通のメールに目が釘付けになる。
日付はいつ?
金曜日じゃないの!
――調子はどうだ?そっちに行く用事が出来たから、週明け、オフィスまで行くよ。
月島マネージャーから、メールが来てたのを見逃していた。
先週はいろいろあったから、家にいて自分宛てのメールを確認するなんてことしなかった。
なので、オフィスでこのメールを開いた時には、すでにマネージャーは、このフロアにやって来た。
なんでわかるかって言うと、声が大きいからだ。
「栗原、来たぞ」
うわっ、さすが、返事受け取る前に来たか。
しんとしたフロアに、マネジャーの大きな声が響く。
「すみません。メール今見たところでした」
仕事のメールを先に確認したから、マネジャーからのメールは後回しになっていた。
「いいよいいよ。お前は昔からそういうやつだった」
そう言って、軽く肩を抱く。
今から考えると、月島さんは接触しすぎだ。
藤原課長が、月島さんの存在に気が付いて顔を上げる。
そして、めいっぱい警戒しながら月島さんを見る。
月島さんも相変わらずだ。まるで気にしてない。
まあ、予想してたけど課長は、普段と変わりない。
冷静に作業をしている。
二人だけになった時くらい、声をかけてくれればいいのにと、思ってしまうほど課長は何も変わらない。


