確かに、名無しでは可哀想だ。
「雛李ちゃんはどう思う?」
「……良いのでは?」
「あー…まあ、雛李がそう言うなら…」
渋々、といったように真也がため息をついた。
「にしても…おっどろき〜。真也が特定の誰かを気にかけるなんてなー」
特定の…誰か…?
まるで、以前はそうではなかったかのような口ぶりだ。
まるで私を特別扱いしている、と言っているように聞こえるけれどそうではない。
だって、真也は出会った時から優しかった。
素性も知らない私を家に置いてくれて、私のために日常に必要なあらゆるものを揃えてくれた。
きっと真也は、私でなくとも誰にでも優しい人なのだと思う。
特別扱いだなんておこがましい。
真也が私以外にも分け隔てなく、その優しさを振り撒いているのを想像すると、何故だか胸の奥がチクリとした。



