この命に意味があると言うのなら、それは皐のために使うべきだ。
私は今この瞬間、誓った。
皐をお人形になどさせない、絶対に。
心は既に決まっていた。
「……では、一ヶ月の間じっくり悩み、幸峯様を楽しませてくださいませ。お屋敷にて、色良い返事をお待ちしております」
そう言い、歩き出そうとした淡海さんは思い出したかのように一旦足を止め、振り向いた。
「ああ、もう一つ。念のために申し上げておきますが、貴方が今後、どのような答えを選んだとしても未来はさほど変わりませんよ」
そう言い残し、固まる私の耳元に唇を寄せると、ボソリと囁き、不気味なほどに妖艶な笑みを浮かべる。
最後に深々とお辞儀をして、淡海さんは人混みへと去って行った。
淡海さんの去った方を、ぼんやりと見つめる。
嘘だと言って欲しいと、その一心で。
欲しい言葉を、求めるように。
けれど、事実から目を背けては生きて行けない。



