「はぐらかさないで頂きたいですが…」
平静を装う私の心は今、激しくざわついている。
鼓動が速くなるのが分かる。
お祖母様と同じく感じる得体の知れなさ。
正直言って、彼女のことは苦手だ。
「雛李様にはぐらかしなど、とんでもございませんわ」
何が面白いのか、クスクスと笑う彼女。
否、その笑みは作り物で、事実、瞳の色は底冷えするほどに鋭い。
「ああ、そうでした」
ふっと思い出したように、近江さんは唇にその滑らかな人差し指を当てた。
「…?」
何かあるのかと疑問に思っていると、淡海さんは更に楽しげに笑う。
そうして、口を開いた。
「幸峯様は、お怒りになどなってはおりません」
「…え…?」
「寧ろ、お喜びですよ?」
怒ってはいないどころか、喜んでいる?
その意味が理解できない。



