箱庭センチメンタル




「あの、申し訳ありま…せん……」


ただ突っ立っていた私が悪いと、振り返った。


けれどその言葉は、その先の相手を見て尻すぼみになってしまった。



「淡海…さん…」


冷たい瞳で私を見据えてくるのは、よく見知った相手だった。



淡海七緒(オウミ ナナオ)。


お祖母様が唯一信頼をおく、祖母様の側近だ。


私がこの世で私が最も恐れる人の一人だ。



通常、雇われの女中は淡いブルーの簡素な着物を支給されている。


けれど淡海さんの着物はきっちりとした、それでいて華やかさを備えた、お祖母様の与えた上等なもの。


それだけでもう、他の者とは格が違うと言われているようだ。


常にお祖母様に付き従い、必要とあらば要らない女中の排除をお祖母様直々に仰せつかっている。


そんな彼女が、なぜここに?



「ご無沙汰しております、雛李様?最後にお顔を拝見してから、こうしてお会いするのはいつ以来でしょうか」