すると、ロディが、すっ、と私にケータイを差し出した。



…え?

私が話すの…?



ドキドキしながらケータイを耳元に寄せる。


スピーカーを通して、レイの声が近くに聞こえた。



『だから、俺はただ、せっかく同居するならルミナが過ごしやすいようにしようと思っただけでだな………』



「れ……レイ?」



『っ!!ルミ… ……ガッ!! ゴトッ!!』



え、え??


ケータイが床に落ちたような音が聞こえる。



「レイ?だ…大丈夫?」



『………お…おぅ。』



何だか、いつもよりレイの声が近いせいか、変に緊張してうまくしゃべれない。


私は、気持ちを落ち着かせながら話し始めた。



「昨日は…ごめんなさい、変なこと聞いて…

ロディから聞いたよ、体調大丈夫…?」



『…ん、あんま気にすんな。

明日には酒場に出る。』



「同居の件も…いろいろありがとう。

これから、お世話になります。」



『あぁ………そのことなんだけど……』







急に黙り込んだレイに、私はドキドキしたまま言葉の続きを待つ。



…何だろう?

暮らす際のルールとかかな…?



すると、スピーカーの向こうから、ふぅ、と呼吸をする音が聞こえ

さっきより少し小さな声が耳に届いた。



『ルミナ…お前、ピンクの…………』



ピンク……?



「ピンクの…何…?」



すると、レイが堪えきれなくなったように、早口で私に言い放った。



『ぴ…ピンクのぞうきんで、酒場の床を端から端まで全部拭いとけよ!』



「えっ?!」



予想外の言葉に、私は動揺してレイに尋ねる。



「ピンクのぞうきんで床を拭けばいいの?」



その瞬間

私の隣にいたロディが吹き出した。


急に笑い出すロディに状況がつかめずにいると、スピーカーからレイの声が聞こえた。



『ピンクじゃなかったら白でも灰色でもいいから、とにかく床を磨いとけっ!

お前、タダで酒場に居候出来るとでも思ってたのか。』